2025.6.4

PRODUCE 6IX COLORS第5弾 「Magic Hour」
佐野玲於

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GENERATIONSメンバープロデュース楽曲配信プロジェクト『PRODUCE 6IX COLORS』企画第5弾は佐野玲於プロデュースの「Magic Hour」。新進気鋭の若手プロデューサー陣と組んだChill Hip Hopなサウンドで、“今のこの瞬間”を切り取った世界観は、心地良いリラックス感のなかに儚さや刹那を内包するエモーショナルな仕上がり。今回は佐野自身もヴォーカルとして参加しているが、最新のHip Hopシーンを意識した歌声のこだわりからパフォーマーならではのマジカルな仕掛け、インスピレーションの源まで感度の高いトークを聞かせてくれた。

「PRODUCE 6IX COLORS」も第5弾になりますが、これまでの楽曲を振り返った印象は?


それぞれの色がすごく出ていて、結構バラけてますよね。そこがこの企画の醍醐味で、ほかのメンバーがどんな曲を作ってくるのか作品が上がってくるまでわからないんですけど、みんな天邪鬼なので「あっちはこうくるだろうから、こっちはこういこう」ってたぶん想像しながら意識的にバラけさせているんじゃないかと。だからこそ誰もかぶらないジャンルレスなラインナップになっているんだと思います。

佐野さんプロデュースの「Magic Hour」もChill Hip Hopというこれまで出てこなかったタイプの楽曲。というかGENERATIONSとしても新たなジャンルの曲ですね。


たぶんHip Hopサウンドベースは僕しかやらないだろうなっていうのがまずあって、僕しかやらないってことは僕がやるしかないんだろうなと(笑)。あと僕はパフォーマーなので、6曲のなかにパフォーマーがしっかり活きて踊れる曲が絶対あったほうがいいなと思っていて、だったら自分しかいないじゃんっていう無言のプレッシャーでやったところもあります。

曲の方向性は最初からイメージしていました?


いや、Hip Hopベースという以外はまったく決めていなかったです。でも、自分の企画は若手で固めたいと思っていたので「My Turn feat. JP THE WAVY」を一緒にやった、1個下のリッキー(Nvmbrr)にまず声を掛けまして。彼とはふだんからよく遊んでいるし、音楽にも詳しいので今回誰と作るかってなったとき最初に浮かんだのがリッキーだったんです。で、彼とトラックはどうするかって話をしていろいろアイデアが上がったなかで最終的にineedmorebuxに依頼したって感じ。彼も25歳で若いんです。ビートメイクする人ってあんまり外に出ないから彼とは面識はなかったんですけど、ineedmorebuxの作る曲はよく聴いていて「最近キテる」ってずっと思っていたのでお願いしたんですよ。

制作はどのように進めたんですか?


まず僕とリッキーでいろいろ案を出し合って、チルっぽいのとめちゃめちゃゴン攻め系、わかりやすく言うと青か赤の2パターンの案が出て最終的に青(チル)になりました。決め手になったのは曲をリリースするシーズンとヴォーカルの声の色、あとは自分たちの年齢とムードで、すべて併せて考えるとこっちかなと。で、曲が決まったあとリッキーから「玲於くんも一緒に歌ったほうがいいよ」って提案してくれたので今回は僕もヴォーカルとして入りました。

佐野さんのヴォーカル参加はリッキーさんの案だったんですね。


そう。リッキーが言うならやろうっていう。さっきも言ったように彼とは「My Turn」で一緒にやったのでやりやすいし、曲もHip Hopベースだから、これならできるねってことで参加させてもらいました。

作詞もリッキーさんとの共作ですね。


詞の内容は自分が海外に行った経験とか見た景色、そこで感じたことをどんどんリリックしてセッションしながら作っていった感じ。だからひとつのストーリーにはなっていますが、どんな人でもどんなシチュエーションでも「特別な時間を日々生きる」っていうのが一番のテーマになっているんですよ。

なかでも〈今って今しか無い〉ってフレーズはまさにパンチライン。テーマにぴったりですね。


そこはキモですね。トップラインとかはメチャクチャ洋楽なんだけど、日本語も自然に入ってくるなめらかな聴感にしたかったので“英語っぽく聴こえる日本語”を意識したんです。〈今って今しか無い〉って特に若い子が大事にしている言葉だと思うんですけど、これって誰にとっても当てはまると僕は思っていて、かつストレートなワードだからそのままストレートにパッと入れてみました。

確かにどの世代にも刺さる直球ワードです。


そうですね。特に若い世代は僕もそうだったけど「絶対今しかない!」ってマグマみたいなエネルギーの勢いで何でもへっちゃらにできちゃう。しかもその瞬間が無限に続くような気がするんですよね。でも実際は有限で特別な時間ほど速く過ぎて一瞬で終わってしまう。「じゃあその一瞬って何だろう?」って考えたとき、僕の場合は海外の海で見た日没が浮かんできて。「この景色、この瞬間がずっと続いたら最高だな」って強烈に思った記憶があって、そこから「Magic Hour」っていう曲になったんですよ。

一瞬の刹那と輝きが凝縮された本当にいいタイトルだと思います。「Magic Hour」って日没と日の出の前の数10分とカテゴリーされるらしいですね。


星と太陽が交わる瞬間ってことですよね。それもタイトルの意味としていいなと思ったし、あとリッキーってナイジェリアのミックスなんですけど、彼を見ていたらマジック・ジョンソン(NBAの名選手)を思い出しちゃって「“マジック”アワーじゃね?」みたいな(笑)。

マジック・ジョンソンからマジックアワーっていう飛躍がすごい(笑)。


なんかわかんないけど、ふと出てきたんですよ。彼の見た目とかもやっぱブラックが入っているのでカッコいいなって思っていて。しかもマジック・ジョンソンは実際に『マジックアワー』っていう番組をやっていたらしく、そういういろいろなインスピレーションがつながって出てきたタイトルです。

レコーディングはどんなことを意識しました?


洋楽のプレイリストにパンッとこの曲が入っていても違和感なく聴けるところを目指しました。レコーディングのディレクションもリッキーがやったんですけど、彼はHip Hopベースの人なのでどういうふうに歌えば今っぽく聴こえるかとかすごくわかっていて、本当“今”の詰め合わせになったと思います。歌声にオートチューンを掛けたのもそのためで、ヴォーカルはR&Bの歌い方がしっかりあるんだけど、あえて無機質な声色でなめらかに聴こえるようにしたかった。GENERATIONSとしては全然やってこなかったジャンルの楽曲だからふたりともすごく新鮮がっていましたし、僕としてもLDHのヴォーカルイズムで育ってきた彼らをあえて壊してみたいっていうのが正直あったんですよね。

佐野さん含めた3人のヴォーカルバランスも絶妙ですよね。それぞれ特性も個性も違うのに違和感がなく、歌声が入れ替わりながらひとつのハーモニーになっていく感じがすごく心地良かったです。


おー、それはうれしいです。最初にメロディを作って歌詞を入れて、そのあとクロスしてもおもしろいねってなって、交互に声を入れる歌割りになったんです。今のアメリカのHip Hopシーンでも、シンガーが歌ってもラッパーが歌っても成立する楽曲がたくさんあって。それがまたすごく良かったりするんですけど、この曲はそういうのに近いのかもしれないですね。

アウトロでガラッと曲調が変わるのも印象的でしたが、あそこはどんな意図で?


この曲はすごく短くて2分ちょいで終わるシンプルな作り。メンバーも最初「すげぇ、短かっ!」って言ってましたけど(笑)、短いなかでもパフォーマーが踊るパートを作りたいなと。そう思って曲自体はずっとレゲトンベースだけど、アウトロだけトラップにしたって感じです。というのも元々トラック自体はトラップで作っていて、やっていくうちにもっと勢いと季節感を出したいと思ってどんどん変わり今のレゲトンベースになったんですね。でも最初のトラップも良かったから、じゃあアウトロにそれを足そうってことでこの形になったっていう流れ。ライヴでもこの部分はメンバーそれぞれが自分のパフォーマンスをして主役になれるようなシーンを作っているので、そこも楽しみにしてほしいですね。

「Magic Hour」のタイトルにちなんだ話を改めてお聞きしたいのですが。この時間帯は“想像力”とか“直感力”が高まると言われているらしくて……。


宇宙の法則じゃないけど、この世のものじゃないものとつながるとか言いますよね。

佐野さん自身はインスピレーションが高まる瞬間ってどんなときですか?


何も考えず過ごしているときですかね。僕は海外に行ったりとか誰かのライヴに行ったりとか、オフになっているときもふと自分の仕事のことを考えちゃう。遊んでいるときも遊びに集中しているんだけど、例えばおもしろいパッケージを手にしたりすると「うわ、ちょっとこれ撮っておこう」とか、すぐ反応しちゃうんですよ。でもそれってビビビってフィールしたということなので正しいのかなって思っています。

昔からビビビっとくる直感派?


そうですね。たぶんどっかで常におもしろいことを探しているんだと思う。誰かと会ったときもあんまり興味を持てない人の話はすぐ忘れちゃうけど、おもしろい人の話はしっかり覚えているから自然にアンテナを張っているというか。自分の中で本能的に線引きをしている気がします。

佐野さんがおもしろいと思う人、興味を持つ人の傾向はありますか?


やっぱり何かに長けている人はジャンル関係なくおもしろいですよね。食関係とかスポーツ系、あとはデザインでも住職でも何でもやっぱプロはおもしろいし、その話を共有してくれるのも興味深い。

例えに“住職”が出てくるところに佐野さんの交友関係の広さがうかがえます(笑)。


でも住職の人っておもしろくないですか? 欲を捨ててその道に没頭するなんてなかなかできない。そういう自分が知らない世界を知っている人の話を聞くとすごいなって思うし、そこから刺激をもらうのが楽しいんですよね。

そんな佐野さんも今年で20代ラストイヤー。20代のうちにやっておきたいことはあります?


年齢とかまったく気にしないので20代のうちにって感覚もないんですけど、これまでとにかくいろんなものを見て、興味のあることは何でも手に取ってやってきたので引き続きそういうことをしていきたい。あと30代になってからやりたいことも見えてきたので、今はそこに向かって意識しているって感じです。

20代を振り返ると、どんな10年でした?


もう山あり谷ありで濃かったですねぇ。24歳から27歳っていうかなりでかい時間をコロナ禍で過ごしたっていうのもありますし……。でも、それを経て自分の考え方が変わったところもあるので、ここから改めてスタートかなと。20代は勢いで何でもいけちゃうってわかっていたので、それこそ「今しか無い」って感覚で止まらなかったけど、30代40代は働くことの本質がじっくり試される重要な時期だと僕は思っていて。かといって失速するつもりも腰を据えるつもりもないんですけど、20代とは働き方の質が変わるだろうし、若い子からの見られ方も違ってくる。特に30代は20代からは頼られるし、でも自分より上の世代もたくさんいらっしゃるから、その間に挟まれてすごく大変そうってイメージがあるんですよ。でもまだ若さも残っているし、体力もあるし、経済的な余裕も出てくるっていう、すごくいい時期でもあると思っていて。

特に男性の30代はおいしい世代かと。いちばんモテる時期だと思います。


そんな気がします(笑)。できることもさらに増えていくと思うので楽しみですし、楽しんでいきたいですね。

Photography_Tany
Text_若松正子

Degital Single Information
「Magic Hour」

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▼「Magic Hour」 Lyric Video
https://youtu.be/70x1r2J7WVQ

▼Steaming / Download
https://generations.lnk.to/magichour